2024年夏から続いた「令和の米騒動」で高騰したコメ市場が、大きな転換点を迎えています。2025年産米の在庫が積み上がる一方、より安い2026年産米の流通が始まり、前年産より新米の方が安くなる「価格の逆転現象」も起きています。
農林水産省によると、6月末時点の民間在庫量は243万トンと過去最高水準に達しました。さらに今後も在庫増加が見込まれており、消費者にとってコメ価格の下落は朗報となる一方、生産者やJAにとっては厳しい状況が広がっています。
2025年産の「コメ余り」が深刻化
2025年産米を巡っては、新米の流通が本格化する中でも前年産の在庫が多く残っています。高値で仕入れられた2025年産米の割高感が強まり、販売しにくい状況が生まれています。
2024年夏から本格化したコメの品薄と価格高騰は、一時、消費者の生活に大きな影響を与えました。しかし価格が高くなりすぎたことで買い控えが広がり、パンや麺類などへ切り替える動きも進みました。
その結果、コメの需要そのものが減少。そこへ2026年産の新米が加わり、前年産米の在庫が残るという状況につながっています。
スーパーの平均販売価格も5キロあたり2000円台まで下落しました。高値が続いた時期と比べれば消費者の負担軽減につながりますが、生産・流通側から見ると、在庫と価格下落という二つの問題に直面する形です。
民間在庫243万トンで過去最高水準に
コメ余りの規模を示しているのが全国の民間在庫量です。農林水産省によると、6月末時点で243万トンに達し、適正水準とされる180万~200万トンを大きく上回っています。
適正水準の上限である200万トンと比較しても、43万トン多い計算になります。
さらに問題となるのは、現在の在庫だけではありません。農林水産省は、2027年6月末の民間在庫量について246万~283万トンに膨らむと見込んでいます。
見通しの上限となる283万トンまで増えれば、現在の243万トンからさらに40万トン増加することになります。
つまり、2025年産米が余っているところへ2026年産米が流通し、その後も在庫が高水準で残る可能性が示されています。
栃木では8189トンの2025年産米が在庫に
全国的な在庫増加は、実際の集出荷施設にも影響を及ぼしています。栃木県矢板市の「とちぎ米広域集出荷センター」では、大量の2025年産米が保管されています。
同センターではコメを玄米の状態で低温保管しています。2025年産米の在庫は8月末時点で8189トンに達しました。
5キロ入りに換算すると約163万袋分となり、この時期としては過去最多とされています。
大量の前年産米が残っているため、問題となっているのが新米を受け入れるスペースです。保管能力が逼迫しており、新たに収穫されたコメの収容場所を確保する必要が生じています。
JA側では地域のJAや運送会社の倉庫などにも協力を求めながら、保管場所を確保しています。
コメ余りは単に価格だけの問題ではなく、保管施設や物流にも影響する段階へ入っていることが分かります。
なぜ高騰から一転してコメ余りになったのか
今回のコメ余りには、価格高騰による需要減少と、新たな生産量の増加という複数の要素があります。特に消費者の行動変化は、在庫増加を考えるうえで重要です。
価格高騰でコメ離れが進んだ
2024年夏から本格化したコメの品薄と価格高騰によって、消費者には買い控えが広がりました。
コメの購入量を減らすだけではなく、主食をパンや麺類などへ切り替える動きも起きたことで、コメ需要そのものが減少しました。
価格上昇によって販売金額が増えても、消費量が減れば在庫が残りやすくなります。高騰したコメ価格が、結果として需要を押し下げる要因の一つになった形です。
2026年産は収穫量増加の見通し
一方、供給側では2026年産米の収穫量が増える可能性があります。
8月15日現在の都道府県別の作柄見通しでは、新潟や北海道など24道府県で予想収穫量が平均を「やや上回る」とされています。
前年産の在庫が十分に減らないまま新米の供給量が増えれば、市場全体のコメの量はさらに多くなります。
需要減少と供給増加が同時に進むことが、現在の在庫問題をさらに複雑にしています。
需要711万トンに対し生産量は最大754万トン
今後のコメ価格を考えるうえで注目されるのが、需要量と生産量の差です。農林水産省の見通しでは、2026年産米は生産が需要を大きく上回る可能性があります。
農林水産省は、2026年産のコメ需要量を最大711万トンと予測しています。
これに対して、生産量は最大754万トンまで上振れするとの見通しです。
単純に比較すると、生産量が需要量を43万トン上回る計算になります。
すでに民間在庫が高水準にある中で、新たな生産分でも供給が需要を上回れば、在庫を減らすことが難しくなる可能性があります。
農林水産省が2027年6月末の民間在庫を246万~283万トンと予測している背景にも、こうした需給環境があります。
2025年産より2026年産が安い「逆転現象」
コメ市場では、古い2025年産米より新しい2026年産米の方が安くなるという、消費者にとって分かりやすい価格差も生じています。この価格差が前年産の販売をさらに難しくしています。
2025年産米は、コメ価格が高騰していた時期に業者が高値で仕入れたものが含まれています。
そのため仕入れ価格を反映すると販売価格を大幅に下げにくい一方、新たに流通する2026年産米は生産者に支払われる概算金が前年より大きく下落しています。
結果として、前年産米よりも新米の方が安いという価格の逆転が生じています。
消費者から見れば、同じコメを購入するのであれば、価格が安く新しい2026年産米を選ぶ動機が生まれます。
一方で2025年産米を抱える流通業者側は、価格を下げれば採算面への影響が出る一方、高いままでは販売が進みにくいという難しい状況に置かれています。
JAの概算金も大幅下落、生産者への影響は
コメ価格の変化はスーパーの店頭だけでなく、生産者が受け取る金額にも及んでいます。各地のJAでは、2026年産米の集荷時に支払う概算金を前年から引き下げる動きが出ています。
新潟県では、JA全農にいがたが2026年産の一般コシヒカリについて、60キロあたりの概算金を1万8500円としました。
これは前年当初から4割の引き下げとなります。
概算金の大幅な下落は、生産者にとって収入面への不安材料となります。消費者にとって店頭価格の下落は家計負担の軽減につながる一方、その裏側では生産者側が価格低下への対応を迫られています。
コメが高すぎれば消費者の買い控えにつながり、安くなりすぎれば生産者側への影響が大きくなります。需給と価格のバランスが重要な局面となっています。
消費者には朗報でも生産者には難しい局面
スーパーでコメを購入する消費者にとって、価格が5キロ2000円台まで下がったことは家計負担の軽減につながります。一方、価格下落が長期化した場合の生産現場への影響にも注意が必要です。
2024年夏以降はコメの品薄と高騰が大きな問題となりましたが、現在は逆に在庫の積み上がりと価格下落が焦点になっています。
短期間のうちに「コメ不足」から「コメ余り」へ市場環境が大きく変化したことになります。
消費者にとっては購入しやすい価格へ戻ることが期待されますが、生産者にとっては収入の減少につながる可能性があり、単純に価格下落だけを歓迎できる状況ではありません。
今後の焦点は過去最高水準の在庫を減らせるか
今後の最大の焦点は、積み上がった民間在庫をどこまで減らせるかです。需要が回復しないまま生産量が高水準となれば、2027年にかけても在庫問題が続く可能性があります。
現在確認されている数字では、6月末時点の民間在庫量は243万トンです。
さらに2027年6月末には246万~283万トンとなる見通しが示されており、在庫問題が短期間で解消されるとは限りません。
特に注目されるのは、価格下落によってコメの需要がどこまで戻るのかという点です。
高騰期にパンや麺類へ切り替えた消費者が再びコメを購入するようになれば、需給改善につながる可能性があります。
一方、2026年産米の生産量が見通し通り高水準となった場合、需要が十分に回復しなければ在庫の積み上がりが続くことも考えられます。
「令和の米騒動」は不足から余剰の問題へ
2024年夏からのコメ市場は、品薄と価格高騰が大きなテーマでした。しかし2026年秋には状況が変わり、前年産米の在庫増加と新米価格の下落という新たな問題が表面化しています。
2025年産米は高値で仕入れられたものが残る一方、2026年産米は前年より低い概算金が設定され、新米の方が安いという逆転現象が起きています。
民間在庫は243万トンと過去最高水準にあり、適正水準とされる180万~200万トンを上回っています。
さらに2026年産は需要量最大711万トンに対して、生産量が最大754万トンとなる見通しで、最大43万トンの供給超過が想定されています。
高騰から下落へと大きく動いたコメ価格がどこで安定するのか。消費者の需要がどこまで戻るのか。そして大量に積み上がった在庫を減らせるのかが、今後のコメ市場を考える重要なポイントとなります。
2025年産のコメ余りに関するFAQ
コメ価格は高騰から下落へと大きく動いているため、現在の在庫量や2026年産米との価格差について疑問を持つ人も少なくありません。確認されている情報を整理します。
なぜ2025年産米が余っているのですか?
2024年夏からの価格高騰によって消費者の買い控えが起き、パンや麺類への切り替えも進んだことで、コメ需要が減少しました。そこへ2026年産米の流通が始まり、2025年産米の在庫が残っています。
現在の民間在庫はどれくらいですか?
農林水産省によると、6月末時点で243万トンです。適正水準とされる180万~200万トンを上回り、過去最高水準となっています。
今後さらにコメが余る可能性はありますか?
農林水産省は2027年6月末の民間在庫量を246万~283万トンと見込んでいます。また、2026年産米は需要量最大711万トンに対し、生産量が最大754万トンとなる見通しです。
なぜ新しい2026年産米の方が安いのですか?
2025年産米には価格高騰期に高値で仕入れられたものがある一方、2026年産米ではJAが生産者へ支払う概算金が前年から大きく下落しています。そのため、前年産より新米の方が安くなる価格の逆転が生じています。
コメ価格の下落は消費者にとって良いことですか?
購入価格が下がることは家計負担の軽減につながります。一方で、生産者側では概算金が大幅に下がっている地域もあり、価格下落が生産現場へ与える影響も注目されています。
まとめ
2025年産米の在庫が大量に残る中、2026年産の新米が流通し始めたことで、日本のコメ市場は「不足」から「余剰」へと状況が大きく変わっています。
6月末時点の民間在庫は243万トンと過去最高水準で、2027年6月末には246万~283万トンまで膨らむ見通しです。
さらに2026年産米は、需要量最大711万トンに対して生産量が最大754万トンとなる見込みで、最大43万トンの供給超過が想定されています。
スーパーの平均販売価格が5キロ2000円台まで下がったことは消費者にとって朗報ですが、生産者側では概算金の大幅下落という問題が生じています。
わずかな期間で「高すぎて買えない」から「余って価格が下がる」状況へ変わったコメ市場。今後は価格だけでなく、需要の回復、在庫の消化、生産者への影響を含め、需給がどこで均衡していくのかが注目されます。


