あなたも一度は給食や施設の食事を口にしたことがあるかもしれません。そんな“日常のごはん”が原因で体調を崩す――坂出市で起きた食中毒は、まさに身近な食品安全の問題を浮き彫りにしました。しかも、同じ給食会社による食中毒はこれで3度目。再発を防げなかった背景には何があったのでしょうか。
坂出市の老人ホームで5人が食中毒
香川県は10月20日、坂出市の特別養護老人ホームで入所者5人が下痢や嘔吐などの症状を訴え、サルモネラ属菌による食中毒と断定したと発表しました。中讃保健所は、食事を提供していた給食会社「サンフードサービス」の施設に対し、18日から3日間の営業停止処分を命じています。
報告は15日に市内の医療機関から寄せられ、「患者の便からサルモネラ菌が検出された」との通報を受けたことが発端でした。調査の結果、10月6日から8日にかけて入所者5人が相次いで発症。幸い全員が快方に向かっています。
原因と背景──繰り返される衛生トラブル
「サンフードサービス」は坂出市で長年、老人ホームや学校給食などの食事提供を担ってきました。しかし、2020年と2023年にも同社の別店舗で食中毒が発生しており、今回で3度目の営業停止処分となります。
原因としては、調理器具や保存容器の洗浄不足、加熱・冷却工程の管理不備などが指摘されています。サルモネラ菌は加熱で死滅しますが、温度管理が不十分だと再繁殖することがあります。食品衛生の専門家は「再発防止には従業員教育と工程記録の徹底が欠かせない」と警鐘を鳴らしています。
行政と企業の対応──営業停止と再教育へ
中讃保健所は今回の発生を受け、施設内の徹底的な清掃や調理器具の廃棄、従業員への衛生指導を行ったと発表しました。また「再発防止計画書の提出を求める」としています。
「サンフードサービス」側も謝罪文を公表し、「原因を分析し、再発防止のための体制を強化する」とコメントしています。ただ、地域の福祉施設関係者の間では「またか」という声も上がっており、信頼回復には時間がかかりそうです。
- 発生場所:坂出市の特別養護老人ホーム
- 患者数:5人(うち1人が入院)
- 原因菌:サルモネラ属菌
- 給食会社:サンフードサービス(過去にも2回発生)
- 行政対応:営業停止3日間と衛生指導
専門家が指摘する“根本原因”
香川大学の食品衛生学専門家によると、「同じ企業で複数回発生している場合、単なる現場ミスではなく、組織的な衛生文化の欠如が疑われる」とのこと。さらに「調理工程の記録化、外部監査の導入、設備更新など“見える化”が重要」とも述べています。
人員不足の中で、効率を重視するあまり基本的な衛生管理が後回しになっている現実も指摘されます。高齢者施設では免疫力が低いため、わずかな管理不備でも重大な健康被害につながる可能性があるのです。
SNSで広がる不安と批判の声
X(旧Twitter)では、「うちの祖母の施設もサンフードだった」「また同じ会社なの?」といった投稿が相次いでいます。一方で、「ちゃんと公表してくれたのは評価できる」という冷静な声も見られました。
消費者の信頼を取り戻すには、再発防止策の“中身”を見せることが不可欠。単なる謝罪や処分ではなく、透明性ある改善の実践が求められています。
今後の見通しと再発防止への課題
県は今後も給食施設の衛生監視を強化し、特に高齢者施設への立ち入り検査を増やす方針です。食品業界全体としても、AIによる温度管理システムや自動衛生チェック機能の導入が進みつつあります。
一方で、現場で働く人たちの意識改革が追いつかない限り、根本的な改善は難しいとの指摘もあります。食品安全を守るのは“機械”ではなく“人”。現場の一人ひとりが責任を持てる環境づくりが問われています。
Q1. 食中毒が起きた施設の家族はどうすれば?
A. 保健所や施設からの連絡を待ち、体調に変化があればすぐに受診を。自己判断で薬を飲むのは避けましょう。
Q2. 食中毒の補償や返金はある?
A. 給食業者や施設側が補償対応を行うケースが多いですが、自治体が仲介することもあります。
Q3. サルモネラ菌はどんな菌?
A. 鶏卵や肉類に多く存在し、加熱不足や保存不備で増殖します。症状は下痢・発熱・嘔吐など。
Q4. 今後、給食を利用しても大丈夫?
A. 企業が改善策を講じれば安全性は回復します。定期的な検査体制の確認が安心につながります。
繰り返される食中毒事件は、単なる「事故」ではなく「警鐘」です。
安全な給食を守るためには、企業・行政・市民それぞれの意識が不可欠。
私たちも「食の安全」を他人事にせず、正しい情報と行動で自分の健康を守りたいものです。