- 倒産件数が高水準:2026年1〜8月の焼肉店倒産(負債1000万円以上)は29件となり、過去最多だった前年同期(35件)に次ぐ歴史的高水準。
- 小・零細店に集中:従業員10人未満および資本金1000万円未満の事業者が全体の96.5%(28件)を占める。
- 主な原因は販売不振:倒産の82.7%(24件)が「販売不振」によるもので、負債5000万円未満の資金力の乏しい店舗が大半。
- トリプルパンチのコスト増:輸入肉の高騰(円安)、電気・ガスなどの光熱費上昇、人件費高騰が経営を直撃。
- 大手チェーンの新規参入:他業態からの大手参入による価格・サービス競争の激化が小規模店を圧迫。
1. 焼肉店の倒産が高止まりする現状とデータ
東京商工リサーチが発表した動向調査によると、2026年1月1日から8月20日までの期間における全国の「焼肉店」の倒産件数(負債額1000万円以上)は29件にのぼりました。この数値は、年間で過去最多となる59件を記録した前年同月期の35件に次ぐものであり、2009年以降の比較では2024年同期と並び過去2番目の高水準となっています。
特に注目すべきは、倒産している事業者の圧倒的多数が小・零細規模である点です。データを詳細に確認すると、経営基盤の弱い個人経営や小規模店舗への打撃が極めて深刻であることが浮き彫りになります。
| 分類項目 | 該当件数(構成比) | 主な特徴と分析 |
|---|---|---|
| 従業員数10人未満 | 28件(96.5%) | 小規模店舗を中心に人手不足や人件費上昇が直接打撃。 |
| 資本金1,000万円未満 | 28件(96.5%) | 個人企業含む資金力に乏しい店舗の倒産が大部分を占める。 |
| 負債額5,000万円未満 | 24件(82.7%) | 余力がない小額負債での行き詰まりが顕著。 |
| 倒産原因:販売不振 | 24件(82.7%) | 客足の減少や値上げ難による収益性の悪化が主因。 |
2. なぜ焼肉店の倒産が急増しているのか?背景と複合要因
かつてコロナ禍においては、店内の強力な換気設備が「感染リスクの低い外食」として大きな評価を受け、さらに「ひとり焼肉」などの新しい需要も手伝って、焼肉業界は飲食業界における「勝ち組」と称されていました。しかし、そこからの急速な環境変化が店舗経営を追いつめています。
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① 原材料・光熱費・人件費の「トリプル高」
第一の要因は、店舗の営業にかかるあらゆるコストの激増です。歴史的な円安基調の影響で、仕入れの大半を占める輸入牛肉の価格が高騰。さらに、鉄板やロースターを使用するため消費量が大きい電気やガスといった光熱費の上昇が続いています。加えて深刻な人手不足に伴うアルバイト・パート等の時給上昇が、粗利率を大きく削り取っています。
② 大手チェーンや他業態からの新規参入による激戦化
コロナ禍で焼肉業態の好調さが浮き彫りになったことで、居酒屋チェーンをはじめとする他業態の大手外食企業が相次いで焼肉市場へ参入しました。大量仕入れによる低価格化や食べ放題メニューの拡充、希少部位の提供、高単価な和牛ブランドの提案など、資本力を活かした積極的な出店・販促を展開。これにより、従来の地域密着型や個人経営の焼肉店は強烈な顧客奪い合いに晒されることになりました。
③ 価格転嫁の難しさと客離れへの恐怖
ファミリー層や若年層を主なターゲットとする小規模な焼肉店にとって、仕入れコストの上昇分をそのままメニュー価格へ転嫁することは極めて危険な選択です。生活防衛意識が高まる中で値上げを行えば、一気に客離れを招く懸念があります。しかし、価格を据え置けば売るほど赤字が膨らむという構造的な「板挟み状態」に陥り、資金繰りを行き詰まらせる事態となっています。
大手チェーンが自社アプリやSNS、大規模キャンペーンで集客を強める一方、資金力に乏しい小規模店は効果的な集客施策を打てず、コスト高と客足減の双方から圧力を受けています。
3. 地域社会や消費者・関連業界への影響
焼肉店の淘汰が進むことは、単に一店舗の廃業にとどまらず、地域経済や食文化、周辺産業へも多様な影響を及ぼします。
手軽に利用できた地域密着型の「まちの焼肉店」が減少することで、外食の選択肢が狭まる可能性があります。また、生き残る店舗も高級化または大手チェーンの均一化へ二極化が進み、個性的でリーズナブルな店舗を見つけることが難しくなる傾向が考えられます。
地元の精肉卸業者や農家、店舗専門の清掃業者、ロースター設備メーカーなど、焼肉店を支える周辺サプライチェーンへの連鎖的な影響も懸念されます。店舗の閉店は商店街の賑わい減少にもつながります。
4. 焼肉業界の今後の見通しと生き残りのポイント
今後も円安や物価高の定着が見込まれる中、焼肉業界の淘汰と再編はさらに加速すると予想されます。生存競争を勝ち抜くためには、単なる価格勝負から脱却した明確な強みの構築が不可欠となります。
今後は「価格以上の肉質や体験価値を提供できる高級・専門特化店」か、「徹底した効率化で低価格を維持する大型チェーン」への二極化が一段と進む見通しです。中間的な特徴の薄い店舗や、経営効率化が進んでいない小規模店にとっては、非常に厳しい環境が続く可能性が高いと言えます。
・独自の仕入れルートによる希少部位の提供や秘伝のタレなど「ここでしか味わえない価値」の創出
・SNSを活用したファン作りの強化とリピーター確保
・モバイルオーダーや自動配膳ロボット導入による省人化・人件費抑制
5. よくある質問(FAQ)
6. まとめ
- 2026年1〜8月の焼肉店倒産は29件となり、前年に続く高水準を記録。
- 倒産の96%超が小規模・零細店舗で、負債5000万円未満・販売不振が大半。
- 円安による輸入肉高騰、電気・ガス代高騰、人件費上昇のトリプル苦が直接的な引き金。
- 大手チェーンの参入による顧客争奪戦の中、価格転嫁できない店舗の淘汰が加速している。
コロナ禍で「安心して通える場所」として外食文化を支えてくれた焼肉店が、いま構造的なコストの嵐と激しい競争の中で試練の時を迎えています。
街の小さな焼肉店には、それぞれの店主がこだわり抜いた独自のタレや、長年地域の人々に愛されてきた温かい居場所という大切な価値が存在します。
厳しい経済環境が続くからこそ、私たち一人ひとりの選択が地域の素敵なお店を守ることにつながります。
8月29日の「ヤキニクの日」をはじめ、特別な日や普段の夕食に、香ばしい煙と賑わいを守り続けている近くのお店へ足を運んでみてはいかがでしょうか。




