第一生命ホールディングスは11日、傘下の第一生命保険において「同意のない転居を伴う転勤」を2027年度から廃止する方針を発表しました。
大手生命保険会社としては初の取り組みで、全国転勤制度の見直しや職務型人事制度への移行が本格化します。
長年「当然」とされてきた転勤の慣行が見直される今回の決定は、働く場所とキャリアの関係を再定義する大きな転換点といえます。
大手生命保険会社としては初の取り組みで、全国転勤制度の見直しや職務型人事制度への移行が本格化します。
長年「当然」とされてきた転勤の慣行が見直される今回の決定は、働く場所とキャリアの関係を再定義する大きな転換点といえます。
point
・第一生命が「同意なき転居」を廃止へ
・2027年度から1万5000人の社員に新制度を適用
・全国転勤型・地域限定型の区分を撤廃、選択制へ移行
目次
「同意なき転居」を廃止、大手生保で初の動き
第一生命ホールディングスが11日に明らかにしたのは、 内勤職を対象にした“本人の同意なしでの転居転勤”を廃止するという方針です。対象は約1万5000人にのぼり、2027年度から新制度が適用されます。 同社は「社員のライフプランとキャリア選択を両立できる働き方を目指す」としています。 大手生保でこの制度を廃止するのは初めてです。
全国転勤型・エリア型の区分を撤廃
これまで同社では、入社時に「全国転勤型」「エリア限定型」を選択する仕組みを採用していました。 しかし、今後はこの区分を撤廃し、社員が毎年自ら転勤希望を選択できる方式に変更します。社員は「本拠地」となる居住エリアを設定し、転勤可能エリアや「転勤しない」という選択肢も選べるようになります。 また、転勤が発生する場合には月額最大16万円の手当を支給し、本人の納得感を高める仕組みを導入します。
背景にある“働き方の多様化”と人材流動性
この改革の背景には、少子高齢化と労働市場の変化があります。 共働き家庭や介護、子育てなど、社員が抱える生活環境の多様化により、 「転勤ありき」の制度が時代に合わなくなってきました。特に若年層では、勤務地や職種の柔軟性を重視する傾向が強まっており、 優秀人材の流出を防ぐためにも、企業側に制度改革が求められています。
役割・成果に連動する処遇体系も導入
第一生命は転居制度の見直しとあわせて、 職務・成果に連動する新たな処遇体系も導入予定です。 従来の年功序列的な評価から脱却し、専門性・スキルを重視した仕組みへ移行します。この動きは「ジョブ型人事制度」への転換を意味し、 社員一人ひとりのキャリアパスを柔軟に設計できる体制を整える狙いがあります。
労使協議と段階導入のスケジュール
新制度の本格運用は2027年度ですが、2025年度から労使間で詳細な協議が始まります。 シミュレーションや試験導入を通じ、現場の混乱を避けながら段階的に制度を移行する予定です。第一生命は「社員の意見を反映しながら、納得性と公平性のある制度をつくる」と強調しています。
転勤文化が問われる日本企業の転換期
日本企業では長らく「総合職=全国転勤あり」が前提とされてきました。 しかし、テレワークや地域密着型の働き方が定着する中で、その前提が揺らぎつつあります。今回の第一生命の決定は、他の大手企業や金融機関にも波及する可能性が高く、 「転勤のあり方」そのものを見直す転換点になるとみられます。
業界への影響と今後の展望
生保業界では、第一生命以外にも日本生命・明治安田生命・住友生命などが全国規模で人材配置を行っています。 今後、他社が同様の制度見直しを検討する可能性は十分あります。また、転勤制度の廃止は地方拠点の活性化や女性管理職の増加にも寄与するとみられ、 企業の人事戦略における“ジェンダー平等”推進にもつながりそうです。
FAQ|第一生命の転勤制度改革について
Q1:「同意なき転居」とは何ですか?
A1:社員の意思に関係なく、転居を伴う異動を命じる人事制度を指します。
Q2:なぜ廃止するのですか?
A2:働き方の多様化に対応し、社員のライフプランや家庭事情を尊重するためです。
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Q3:新制度はいつから始まりますか?
A3:2027年度から全社員を対象に本格導入予定で、2025年度から準備が進められます。
Q4:転勤が完全になくなるのですか?
A4:希望すれば転勤も可能で、選択制として本人の意思を反映する仕組みになります。
Q5:他社への影響は?
A5:生保業界全体や大手企業に波及する可能性があり、“転勤文化”の見直しを促す動きになると見られます。
まとめ|働き方の「選択」が企業の競争力に
第一生命が踏み出した「同意なき転居」廃止は、
単なる人事制度改革ではなく、企業文化の変革そのものです。
社員の自由な選択を尊重する仕組みは、長期的には人材定着と生産性向上につながると期待されます。
“転勤は当然”という常識が崩れつつある今、
日本の企業社会は「働き方を自分で選ぶ時代」へと確実に移行しています。
