フィンランドは、教育分野で先進的な取り組みを行ってきた国として世界的に注目されています。
特に、2018年から始まったデジタル教育の導入は、大きな改革でした。
しかし、その後、デジタル化が思わぬ影響を与え、成績低下や心身の不調が顕在化しています。
このような状況を踏まえ、フィンランドでは紙の教科書を復活させる動きが広がっており、その背景には何があるのでしょうか。
本記事では、フィンランドにおけるデジタル教育の現状とその影響、そして今後の展望について詳しく解説します。
フィンランドのデジタル教育の背景と変遷

フィンランドは、2018年から教育現場においてデジタル化を積極的に推進してきました。
生徒には無料でラップトップが配布され、デジタル教材を使った授業が導入されるようになりました。
この改革の目的は、学習の効率化や教育格差の解消でした。しかし、導入から数年が経過した今、その影響について見直しが行われています。
デジタル教育の目的と期待
フィンランド政府がデジタル教育を推進した背景には、以下のような目的がありました。
- 教育の平等性を促進する
デジタル機器をすべての生徒に配布することで、家庭環境に関係なく、すべての子どもに平等に教育の機会を提供することが目指されました。 - 効率的な学習を促進する
インタラクティブな教材やオンラインリソースを利用することで、学習がより効率的で魅力的なものになると期待されました。 - 技術スキルの習得
デジタルツールを使いこなすことは、21世紀の重要なスキルであり、これを授業に組み込むことで、将来に向けた準備が整うと考えられていました。
デジタル化による最初の成果
導入初期には、生徒のデジタルリテラシーが向上し、教育の質が向上したという評価もありました。
しかし、次第にその効果には疑問の声が上がるようになりました。
成績低下と集中力の問題

デジタル教育が進む一方で、フィンランドの学生の学業成績は低下し、集中力にも悪影響が出てきました。
特に、デジタル教材の使用が進む中で、情報の消化力が低下し、覚えにくくなったとの報告があります。
PISA調査の成績低下
2006年のPISA(国際学習到達度調査)でフィンランドは世界でもトップの教育システムとされていましたが、2018年の調査結果では、その成績が大きく低下してしまいました。
この低下の一因として、デジタル教育の影響が指摘されています。
デジタルデバイスによる注意散漫や学習内容の記憶の定着に関する問題が浮き彫りとなり、学業成績に対する懸念が高まりました。
注意散漫と情報の忘れやすさ

デジタル教材を利用することで、一度に多くの情報にアクセスできる反面、学習内容を深く理解することが難しくなるケースが増えました。
生徒は、短期間で多くの情報を吸収しようとするあまり、重要な部分が記憶に残らないことが増えてきました。
これが注意散漫や学業成績低下の原因の一つとされています。
紙の教科書復活の動きとその効果
デジタル教育に対する見直しの動きが広がる中で、フィンランドでは紙の教科書を復活させる動きが注目されています。
特に、リーヒマキ市では、6年ぶりに紙の教科書を授業に取り入れる実験が行われました。この試みは、学業成績の回復や集中力の向上を目指したものです。
紙の教科書に戻ることでの効果
生徒たちが紙の教科書に戻ることで、情報の整理や理解が深まり、記憶にも定着しやすくなったと報告されています。
デジタル機器に依存しないことで、集中力が高まり、学習効果が改善されるという結果が出ています。
スウェーデンの対応とその影響
フィンランドと同様に、スウェーデンでも紙の教科書に回帰する動きが強まっています。
昨年、スウェーデン政府は学校における紙の教科書購入に多額の予算を投じ、その効果を検証しています。
この動きは、デジタル教育の弊害を認識した上で、従来の学習方法の良さを再評価しようという試みです。
心身の健康への影響

デジタル教育の導入後、フィンランドでは若者の心身の健康にも悪影響が出ていることが懸念されています。
特に、孤独感やうつ病、不安などが増加していることが報告されています。これらの問題は、過剰なスクリーンタイムやオンライン活動によるものと考えられています。
メンタルヘルスの悪化
過度なデジタル端末の使用が、フィンランドの若者のメンタルヘルスに悪影響を与えていることは、専門家の間でも問題視されています。
特に、孤独感や不安感、うつ症状が増加しており、これらはオンライン学習やソーシャルメディアの過剰使用が原因とされています。
社会的孤立の問題
デジタル環境に長時間いることで、学生同士の直接的なコミュニケーションが減少し、社会的な孤立感が増しています。
これが精神的な健康を害し、学業にも悪影響を与えている可能性があります。
今後の展望:バランスの取れた教育の必要性
フィンランド政府は、デジタル教育の弊害を緩和するため、スマートフォンやその他の電子機器を授業中に使用しない法案を準備しています。
この動きは、学生の健康と学業成績を守るための対策とされています。
法的措置の進展
フィンランドでは、学校内でのデジタル端末使用制限に関する法案が進行中です。
これにより、授業中のデジタルデバイスの使用を制限し、従来の学習方法に戻す方向性が示されています。
バランスの取れたアプローチの模索
一方で、デジタル教育には依然として学習資源の平等化や教育格差の解消という利点があります。
そのため、完全に紙の教科書に戻すだけでなく、デジタル教育と従来の方法をうまく融合させたバランスの取れたアプローチが求められています。
まとめ
フィンランドの教育改革の歩みは、デジタル教育の導入とその結果による課題に直面しています。今後は、以下の点に焦点を当てた改善が期待されています。
- デジタル教育による学業成績の低下と集中力不足の解決策の模索
- 紙の教科書復活による学習効果の改善
- 心身の健康を守るためのデジタルデバイス使用制限
- 教育格差解消のためのデジタルツールの適切な活用
- 学生のメンタルヘルスを考慮した教育環境の整備