近年まれにみる猛暑と降水量の少なさが、福島県産ピーマンに深刻な影響を与えています。
尻ぐされと呼ばれる異常果が大量発生し、出荷量が激減。市場では価格が大幅に上昇し、今後も高値傾向が続く可能性があります。
本記事では、農家の現状、原因分析、消費者への影響、そして今後の展望を詳しく解説します。
- 尻ぐされ果の原因
- 農家の被害と対策
- 価格上昇の影響
チェックリスト：ピーマン高騰の要因と状況
まずは、今回の異常事態を簡潔にまとめたチェックリストで基本情報を確認します。
- ☑ 発生時期：2025年6月後半〜7月現在
出荷開始時から異常果が頻発し始め、影響が広がっています。 - ☑ 被害地域：福島県三春町周辺
ピーマンの特産地として知られ、JA福島さくらの選果場に多くが集まります。 - ☑ 主な異常：尻ぐされ果（お尻が黒ずみ腐る症状）
猛暑と水不足により、果実に十分な養分が届かず障害果が発生。 - ☑ 出荷量：昨年の7割以下に減少
JA福島さくらでは700コンテナから400コンテナへ落ち込みました。 - ☑ 市場価格：1kgあたり約690円へ上昇
昨年同時期より150円以上の値上がりを記録。 - ☑ 対応策：農園では1日5回の水やりとエンジンポンプ導入
限られた資源での緊急対応が続いています。
異常気象がもたらしたピーマンへのダメージ
福島県内は2025年7月中旬にかけて連日30度を超える真夏日が続いており、特に会津若松市では34度を超える暑さとなりました。三春町を中心とした地域は福島県内でもピーマンの一大産地ですが、これらの高温と極度の水不足が栽培に大きな影響を与えています。
黒羽実樹さんと橋本剛さんが運営する「さくら彩園」では、今年から大規模なピーマン栽培を始めましたが、開花後の実の肥大期において水分不足が深刻化。これが直接的な原因となって、「尻ぐされ果」が大量に発生しています。
農家の証言：「半分が廃棄に…」厳しい現場の声
橋本さんは「収穫したうちの半分が尻ぐされで廃棄。農園としては大打撃です」と語ります。JAの選果場にも状態の良くない実は出荷できず、取引される数量が激減しています。
JA福島さくら・駒木根靖生さんも「去年の今頃は700コンテナだったが、今年は400に届かない」と危機感を示します。
農家によっては灌水設備の整備が間に合わず、打つ手がないまま天候に翻弄される状況です。一方で、橋本さんたちは早期にエンジンポンプを導入し、1日5回の水やりを行うなど、自衛策に努めていますが、その分コストも重くのしかかっています。
出荷量・価格の比較表（2024年 vs 2025年）
以下に、昨年と今年の出荷状況と価格の比較をまとめました。尻ぐされ果の割合も併記しています。
このように、出荷量はほぼ4割減、平均価格は約3割増と、大きな差が生まれています。とくに傷みやすい尻ぐされ果の割合が半数近くまで上がったことで、流通量が一気に落ちた形です。
消費者と流通業者への影響
関東地方や福島県内に多く出荷される福島産ピーマンですが、スーパーや量販店では今後さらに値上がりする可能性が高まっています。特売品として安価に売られる機会が減少し、代替品（パプリカやししとう）に切り替える動きも出ています。
飲食店でも、ピーマンを使用するメニューの原価が上昇し、提供中止や価格改定の判断を迫られるケースが出始めています。こうした局所的な気候変動が、外食・家庭料理の価格に波及する典型例といえるでしょう。
SNSでの反応：農家と消費者の悲鳴
X（旧Twitter）やInstagramでも以下のような声が見られます。
- 「スーパーのピーマン高すぎて手が出ない」
- 「尻ぐされなんて初めて聞いた。農家さん大丈夫なの？」
- 「福島の野菜、いつも買ってたけど今年は少ない…」
- 「農家の努力、もっと知って応援したい」
農家のリアルな状況や工夫が伝わり、消費者の間でも共感や支援の声が広がっています。
よくある質問（FAQ）
Q1：なぜ尻ぐされ果が発生するのですか？
A：高温と水不足でカルシウムなどの栄養分が行き届かず、実のお尻が黒く変色してしまう障害です。
Q2：ピーマンの価格上昇はいつまで続きますか？
A：少なくとも7月末までは高値傾向が続くと見られています。今後の天候次第では長期化する可能性も。
Q3：尻ぐされ果は食べても問題ないの？
A：黒く変色した部分を除けば食べられますが、見た目や味に影響があるため、市場には出回りません。
Q4：農家はどうやって対処しているの？
A：水やりの頻度を増やしたり、エンジンポンプを導入したりして、対策を講じています。
Q5：他の野菜への影響はありますか？
A：ナスやトマトなども水不足で生育に影響が出始めており、同様の価格上昇が懸念されています。
農業と気候変動の最前線で
今回の福島産ピーマンの尻ぐされ果大量発生は、ただの農作物被害にとどまりません。猛暑や干ばつが農業現場に与える影響は、すでに“異常気象”の枠を超え、日常化しつつあります。
生産現場では懸命な対応が続きますが、限界はあります。これまで通りの方法では通用しない、農業の“気候変動対応力”が問われる時代が訪れているのです。
消費者の私たちも、ただ高騰を嘆くのではなく、背景にある気象リスクや農家の努力を知り、理解することが求められています。ピーマン1袋の裏側に、今年の夏の過酷さと、農業の最前線の闘いが刻まれています。
