関西で愛される「アイスキャンデー」の謎｜なぜ棒は斜め？老舗が明かす88年の歴史と文化

2025年6月19日

「アイス」と聞けば、カップやコーンに入ったものを思い浮かべませんか？実は関西では、昔ながらの「アイスキャンデー」に特別なこだわりがあったのです。

88年続く老舗の存在や、棒が「斜め」に刺さっているという驚きの事実が、関西の奥深い食文化を物語っています。

この記事では、関西の夏の風物詩「アイスキャンデー」について、以下の謎を解き明かしていきます。

なぜ関西人は「アイスキャンデー」と呼ぶことにこだわるのか？
88年の老舗が語る、棒が「斜め」に刺さったシンプルな理由とは？
関西でアイスキャンデー文化を広めた、もう一つの老舗の「計算された斜め」の秘密

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1. 関西人が「アイスキャンデー」にこだわる理由

夏の暑い日、多くの人が冷たいおやつに手を伸ばします。

しかし、その呼び方には地域差があるようです。

東京など他地域では「アイス」や「アイスクリーム」が一般的ですが、兵庫や大阪といった関西出身者からは「アイスキャンデー」という言葉が自然と出てきます。

特に「北極」や「551」といった具体的なブランド名を挙げる人も多く、単なる冷菓としてではなく、地域に根付いた文化として強い愛着を持っていることがうかがえます。

【基本情報チェックリスト】

☑ 商品・文化名：アイスキャンデー（関西での呼び名）

☑ 発祥地域：明確な発祥地の特定は難しいが、関西、特に大阪・神戸に老舗が集中

☑ 歴史：神戸の「餅屋大西」は1937年創業（88年）、大阪の「北極」は1945年創業

☑ 特徴：棒が斜めに刺さっているものが多い、手づくり感のある素朴な味わい

☑ 現在の状況：夏の風物詩として定着。お土産としても人気が高い

☑ 代表的な店舗：北極（大阪）、551蓬莱（大阪）、餅屋大西（神戸）

2. アイスキャンデーの歴史｜なぜ神戸の老舗で棒は斜めになったのか

関西のアイスキャンデー文化の深さを探るため、まず神戸市長田区にある創業88年の老舗「餅屋大西」を訪ねました。

三代目店主の大西健一さん（64）によると、創業は1937年。もともと餅屋ではなく、アイスキャンデーの店として始まった、まさに「老舗中の老舗」です。

【歴史の時系列フロー】

1937年（昭和12年） → 大西健一さんの祖父・源二郎さんが神戸でアイスキャンデー店「大西」を創業。
戦中・戦後 → シンプルな材料で手軽に作れるアイスキャンデーが、庶民の楽しみとして広まる。
現在 → 創業から88年。地元民やその愛犬にまで愛される夏の風物詩として定着。

この「大西」のアイスキャンデー、実は棒が「斜め」に刺さっています。孫の奏汰くんも自由研究のテーマにするほど不思議なこの形。

その理由を大西さんに尋ねると、驚くほどシンプルな答えが返ってきました。

「意図して斜めにしてるというわけでは…必然というか、斜めになっちゃってるんです。液体の状態で棒を入れるので勝手に斜めになる」

– 大西健一さん（餅屋大西三代目店主）

手づくりの過程で生まれる「自然な傾き」。それが88年続く老舗の味であり、形だったのです。

3. 大阪の定番「551蓬莱」が語る、ミナミのアイスキャンデー文化

次に向かったのは、豚まんで有名な大阪・ミナミの「551の蓬莱」。

実はここもアイスキャンデーの人気店です。なぜ販売を始めたのか、株式会社蓬莱の橋詰夏美さんに聞きました。

「（ミナミの）商店街でアイスキャンデーを当時いくつかの店が販売していて、『いいな～』と思って販売させていただいたというところがスタートです」

– 橋詰夏美さん（株式会社蓬莱）

昔のミナミには、多くのアイスキャンデー店が軒を連ねていたそうです。

551のアイスキャンデーは、その賑わいの中から生まれました。

しかし、なぜ関西でこの呼び方が定着したのか、その歴史的経緯までは分かりませんでした。

ただ、重要なヒントを教えてくれました。「うちより早くから販売していたのが『北極』さんです」と。

4. 謎の鍵は大阪「北極」にあり！計算された“斜めの棒”の秘密

蓬莱よりも歴史が古いという「北極」へ。

店頭には「大阪名物アイスキャンデー」の文字が輝きます。1945年（昭和20年）創業のこのお店こそ、関西のアイスキャンデー文化の謎を解く鍵でした。

「北極」のアイスキャンデーも、棒は見事に「斜め」。その理由を株式会社アークティックの久保田光恵代表に尋ねると、それは「計算されたもの」だという答えが。

「色々計算されたものですね。斜めにすることで2本一緒に抜けるんです」

– 久保田光恵代表（株式会社アークティック）

製造工程を見せてもらうと、確かに職人が型からアイスキャンデーを2本同時に抜く際、斜めの棒が作業効率を高めていました。

さらに、食べる側にもメリットがあると言います。

「まっすぐ食べるよりもこのまま食べていただける。食べやすさもございます」

– 久保田光恵代表（株式会社アークティック）

5. 「斜め」が関西の文化を創った！お土産としての画期的な工夫

驚くべきことに、この「斜めの棒」こそが、アイスキャンデーを関西全域に広める原動力になったというのです。

「ドライアイスを入れていろんな地方にお持ち帰りできるようにしたのが始まりだと思っています。斜めにすることによって（箱の）空間が大きくできるってこともありましたので」

– 久保田光恵代表（株式会社アークティック）

棒が斜めだと、箱に詰めた時に棒が外側を向き、中央に大きな空間が生まれます。

そこに大きなドライアイスの塊を入れることで、長時間の持ち帰りが可能に。

この画期的な工夫によって、「北極のアイスキャンデー」は手土産の定番として関西一円に広まり、アイスキャンデー文化そのものを定着させたと久保田代表は語ります。

6. 関西と他地域との違い｜アイスキャンデー文化比較

関西でなぜこれほどまでにアイスキャンデーが愛されているのか、他地域との違いをまとめました。

比較項目	関西	関東など他地域
呼び方	アイスキャンデー	アイス、アイスバー
特徴	棒が斜め、手づくり感、素朴な味	多様な形状、フレーバーが豊富
歴史	戦前から続く老舗が存在	大手メーカー品が主流
文化的背景	お土産文化として発展。持ち帰り前提の工夫（斜めの棒）が文化を広めた。	個人消費が中心。多様なニーズに応える商品開発が進む。