東京・恵比寿の高額不動産、評価額10億円。その不動産が、相続人であるべき家族の手を離れ、他人の手に渡ったという衝撃の事例が明るみに出ました。
この背後には、認知症を患っていた故人が作成した遺言書が絡んでおり、その有効性を巡る法的な争いが展開されています。
遺言書が本当に故人の意思を反映していたのか、そしてその過程で何が問題だったのか、詳しく見ていきます。
東京・恵比寿の10億円不動産、相続人が他人に
A子さんの伯母が遺言書を作成
A子さん(55)の伯母は、令和元年2月に公正証書遺言を作成しました。
この遺言書によって、伯母が所有していた不動産が地元不動産会社の男性に譲渡されることになっています。
しかし、この遺言書作成時点で伯母は認知症の症状を示しており、その後、さらに判断力が低下していきました。
伯母の認知症と遺言書の影響
伯母が遺言書を作成した後、わずか4ヶ月後の令和元年6月には「短期記憶に問題あり」と診断され、「意思の伝達能力は具体的要求に限られる」と評価されました。
この時点で、伯母は日常生活でも認知症の影響が顕著になっており、この状態で作成された遺言書が本当に伯母の意思を反映しているのか、A子さんは疑問を抱きました。
公正証書遺言と認知症患者
公正証書遺言は、法律に基づき公証人が遺言者の意思を確認し、正式に作成するものですが、認知症が進行している場合、その判断力が確認できるかどうかが問題となります。
現行の公証人制度では、認知症を理由に遺言書の作成を拒否することはないため、認知症患者が遺言を作成した場合、その後に遺言書を巡る争いが発生するリスクが高くなります。
A子さんの法的対応
A子さんは、不動産譲渡に強く反発し、法的手続きを進めています。
譲渡された不動産の評価額は、固定資産評価額で約4億円、現在の市場価格では約10億円に達するとのことです。
この高額な不動産の譲渡に対し、A子さんは不正を正すために、東京地方裁判所に仮処分を申請しました。この仮処分によって、男性が不動産を第三者に売却することが一時的に制限されました。
さらに、A子さんは民事訴訟を起こすことを決意し、遺言書の効力を無効にすることを目指しています。
また、A子さんの代理人弁護士は、遺言書作成に不正な手段が使われた可能性があるとして、詐欺罪で警視庁に刑事告発する準備も進めています。
不動産会社の男性との関係
A子さんと地元不動産会社の男性は、長年にわたって家族ぐるみの付き合いがあり、男性は伯母が所有していた不動産を管理していました。
しかし、今回の遺言書の問題は、この信頼関係を裏切る形での遺産譲渡が行われたことにあります。
A子さんは、男性への感謝の気持ちはあるものの、「感謝とこの問題は別の話」と強調し、財産の管理や譲渡に関しては透明性と公正さが求められるべきだと主張しています。
高齢化社会と遺言書作成の重要性
日本は急速に高齢化社会を迎えており、今後ますます高齢者の遺産相続に関する問題が増加することが予想されます。
厚生労働省の統計によると、昨年の死亡者数は過去最多の157万6016人に達し、2037年から2042年には年間の死亡者数が160万人を超えると予測されています。
これに伴い、遺言書作成の需要も増加し、遺言公正証書の作成件数は年々増加しています。
ただし、認知症や老化による判断力の低下が進むと、遺言書が遺言者の本意に基づいているかを証明することが困難となり、後に争いが生じやすくなります。
公証人による遺言書作成のルールと問題点
公正証書遺言は、公証人によって正式に作成され、遺言者の意思が正確に反映されることが前提です。
しかし、認知症の進行がある場合、その意思が本当に本人のものかを確認するのは難しくなります。
そのため、遺言書に関して後に争いが起こることが増えており、今回のような事例もその一例です。
まとめ
- 東京・恵比寿の10億円不動産が、相続人の手を離れ他人に譲渡された。
- 譲渡された不動産の評価額は固定資産で約4億円、現在の市場価格で約10億円。
- 故人は遺言書作成時に認知症の症状があった。
- A子さんは不動産の譲渡に反対し、東京地方裁判所に仮処分を申請。
- 民事訴訟を起こし、遺言書の無効を求めている。
- この事例は認知症患者の遺言書作成のリスクを示している。
この事例は、認知症患者の遺産相続や遺言書作成における複雑さを浮き彫りにしています。
A子さんのように、遺言書が本当に本人の意思を反映しているかどうかが問題となり、その後の法的対応が注目されています。