近年、街中のいたる所で見かける「整体院」ですが、今その裏側で深刻な経営危機が広がっています。整体院 倒産件数は過去最多を更新し、急成長を遂げていた大手チェーン「JITAN BODY」の運営会社も破産手続きを開始しました。かつてないほど身近になった整体業界で、一体何が起きているのでしょうか。
「回数券を買ったばかりなのに店がなくなった」「無資格者の施術は本当に安全なの?」といった不安が、利用者の間で広がっています。なぜコンビニの2.5倍以上もの店舗が乱立し、そして潰れていくのか。あなたの大切な体と資産を守るために、知っておくべき業界の「ひずみ」と現状について詳しく解説します。
この記事のポイント
- 整体・マッサージ業の倒産は2024年は110件と過去最多を記録
- 店舗数はコンビニの2.5倍超(約14.5万カ所)に達し、過当競争が激化
- 前払い回数券による資金繰り悪化が、突然の閉鎖やトラブルの要因に
- 無資格者による「自己流施術」の増加が、安全性への懸念を呼んでいる
1. ニュース概要:大手チェーン「JITAN BODY」の破産
11月、全国に70店舗以上を展開していた整体院「JITAN BODY」を運営する企業が、東京地裁より破産手続き開始決定を受けました。積極的な多店舗展開により急成長を遂げていた同社ですが、最終的には多額の負債を抱え、債権者は会員利用者を中心に約1000名に上るとされています。
業界内でも知名度が高かった企業の経営破綻は、多くの利用者に衝撃を与えました。特に、高額な回数券を購入していた顧客にとって、サービスを受けられなくなるだけでなく、返金も極めて困難という過酷な状況が突きつけられています。
2. 発生した背景・社会的要因
整体業界の倒産が急増している背景には、構造的な供給過多があります。厚生労働省の調査によれば、あん摩マッサージ指圧や、はり・きゅうの施術所数は約14万5000カ所に達しています。これは国内の主要コンビニ店舗数の約2.5倍に相当する数字です。
さらに、整体院は「国家資格」を必要としない民間資格や無資格でも開業できるため、参入障壁が非常に低いという特徴があります。異業種からの参入や個人開業が相次いだ結果、パイの奪い合いとなり、過剰な広告宣伝費をかけなければ集客できない「消耗戦」に突入しています。
3. 影響を受けた生活者・地域の声
突然の閉鎖に直面した利用者からは、怒りと悲しみの声が上がっています。「回数券を10万円分買ったばかりなのに、翌日に店が閉まっていた」「信頼して通っていたのに裏切られた気分だ」といった投稿がSNS上で散見されます。
また、地域の高齢者からは「行きつけの場所がなくなるのは困る」という声がある一方で、あまりに多すぎる整体院に対して「どこが良いのか判断がつかない」「ポストに毎日チラシが入っていて怪しい」といった不信感を募らせる生活者も増えています。
4. 金額・人数・生活負担への影響
今回のJITAN BODYの件では、債権者数約1000名、負債額も数億円規模に達しています。一人あたりの被害額は数万円から数十万円に及ぶケースもあり、家計への負担は決して小さくありません。
整体業界で一般化している「前受金ビジネス(回数券販売)」は、消費者にとって1回あたりの単価が安くなるメリットがある反面、店が倒産すればその全額を失うリスクを孕んでいます。物価高で生活費が圧迫される中、健康維持のための支出が「サンクコスト(回収不能な費用)」となる事態が相次いでいます。
5. 行政・自治体・関係機関の対応
相次ぐトラブルを受け、消費者センターへの相談件数も増加傾向にあります。行政側は、過度な広告表現(「たった一回で完治」など)に対する監視を強めていますが、民間療法である「整体」は医療行為ではないため、規制の範囲が限定的であるという課題があります。
自治体によっては、無資格者による施術トラブルを防ぐため、国家資格保持者が在籍する「保健所への届出済施術所」の利用を推奨する啓発活動を行っていますが、依然として情報の周知には至っていないのが現状です。
6. 専門家の分析:ビジネスモデルの限界
帝国データバンク等の専門家は、整体業界の「前受金依存」を危惧しています。回数券で得た資金を、店舗の賃料や人件費、あるいは新規出店の広告費に回す自転車操業に陥っている業者が少なくないからです。
また、労働環境の悪化も指摘されています。激しい価格競争により、現場のスタッフには過酷なノルマが課せられ、離職率が上昇。その結果、技術力の低いスタッフが施術を担当し、顧客満足度が低下してさらに客離れが加速するという悪循環が起きています。
7. SNS・世間の反応:生活者の実感
ネット上では「整体院は多すぎて選べない」「コンビニより多いのは異常」といった冷ややかな意見が目立ちます。また、「SNSでキラキラした内装を見せて集客しているところは怪しい」と、マーケティング先行の経営スタイルを警戒する層も増えています。
一方で、「国家資格のある整骨院と、リラクゼーションの整体の区別がついていない人が多すぎる」という指摘もあり、利用者側のリテラシー向上を求める声も上がっています。
8. 今後の見通し・生活への広がり
2025年も、整体院の淘汰は進むと予測されます。特に、アフターコロナで各種支援策が終了した今、自力で集客できない店舗の倒産はさらに高水準で推移するでしょう。
今後は、単なる「癒やし」だけでなく、確かなエビデンスに基づいた施術や、透明性の高い会計制度を持つ店舗だけが生き残る時代になります。私たち利用者は、「安いから」「近いから」という理由だけで選ぶのではなく、経営の健全性を見極める目を持つ必要があります。
9. FAQ:読者が抱く疑問
Q1. 通っている整体院が倒産したら、回数券の返金は受けられますか?
A1. 破産手続きが開始されると、一般の顧客は「一般債権者」となります。法人の資産が残っていない場合、返金を受けられる可能性は極めて低いです。
Q2. 潰れそうな整体院を見分けるサインはありますか?
A2. 「異常なほど割引率の高い回数券の購入を強く勧めてくる」「常にスタッフが入れ替わっている」「店内の清掃が行き届いていない」などは危険信号です。
Q3. 「整体」と「整骨院」は何が違うのですか?
A3. 整骨院(接骨院)は「柔道整復師」という国家資格保持者が施術し、保険適用が可能な場合があります。整体は民間療法であり、資格の有無にかかわらず開業可能です。
10. まとめ:生活者視点の結論
今回の整体院 倒産ラッシュは、決して他人事ではありません。健康を守るための場所が、経済的なトラブルの場になってしまうのは非常に残念なことです。
今後、整体院を選ぶ際は「高額な回数券をまとめ買いしない」「国家資格の有無を確認する」「口コミの不自然な多さに惑わされない」といった自己防衛が不可欠です。自分の体を預ける場所だからこそ、表面的な広告に惑わされず、慎重に見極める姿勢を持ちましょう。




