金沢の移動販売車製造会社シブヤが事業停止で 負債総額約4億5300万円

金沢市に本社を構える移動販売車の製造会社「シブヤコーポレーション」が事業を停止し、弁護士に処理を一任しました。

多額の負債を抱えた末の決断であり、地元の関連業界にも少なからぬ影響を与える可能性があります。

設立から約40年にわたり地域に根ざしてきた企業の突然の停止は、製造業の経営の厳しさを物語っています

事業停止の概要
  • 金沢市入江の「シブヤコーポレーション」が事業を停止
  • 代表は澁谷武彦
  • 弁護士に事後処理を一任
  • 負債総額は約4億5300万円の見込み
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目次

事業停止の背景にある経営環境の変化

長年の企業努力と業態転換の経緯

シブヤコーポレーションは昭和60年に設立され、当初は広告代理店および保険代理店として業務を展開していました。

しかし平成17年以降、キッチンカーや移動販売車の製造販売へと事業の主軸を移しました。

この分野では地域のイベントや災害時の支援インフラとして需要が高まっており、同社は軽自動車やワンボックスカーをベースにした改造車両の製作を行い、多くの顧客から評価を得てきました。

その後も顧客ニーズに対応しながら、仕様のカスタマイズや衛生面の改善提案などを行ってきました。

しかし、業界の競争激化や原材料費の高騰といった複合的要因により、次第に収益構造に綻びが生じていきました。

工場閉鎖と外注化によるコスト増

特に経営悪化を決定づけたのは、白山市にあった自社工場の閉鎖です。

設備の老朽化や維持費の負担が理由とされていますが、製造をすべて外注に切り替えたことで外注費が増加し、利益率の低下を招きました。

コロナ禍以降、移動販売車の活用が一時的に拡大した一方で、需要の反動や小規模事業者の資金不足により新規受注が伸び悩み、資金繰りが一段と厳しくなったとみられます

令和6年5月9日までに、事業継続の見通しが立たないことから、代表の澁谷武彦さんは事業の停止と弁護士への一任を決断しました。

今後は法的整理に進む可能性が高く、約4億5300万円にのぼるとされる負債の処理が注目されます

地域と業界への波紋

金沢市内外の関連企業への影響

石川県内では移動販売車やキッチンカーの需要が根強く、地域イベントや観光地を支えるインフラとして認知されています。

特に災害時には炊き出しや物資提供の手段としての役割も期待されており、地元行政との連携も模索されてきました。

その中で、同業の株式会社ゼックなどは、エンジニアリングやカスタマイズ性を武器に全国展開を行っており、今回の事業停止により新規顧客の流入が進む可能性があります。

一方、シブヤコーポレーションと取引のあった部品供給業者や下請け企業には売掛金回収などの不安が広がっています。

中小製造業が直面する構造的課題

今回の事案は、地方の中小企業が抱える課題を浮き彫りにしました。

少子高齢化と人材不足により自社での製造体制を維持するのが困難になっていること、また原価上昇を価格に転嫁できない取引慣行が依然として根強いことが背景にあります。

また、営業力やマーケティングの不足も業績悪化に拍車をかけた要因です。

SNSや動画プラットフォームを活用した集客が重要視される中で、シブヤコーポレーションは旧来の営業手法からの脱却が十分に進まなかったと見られます。

顧客と取引先の動揺と対応

車両保有者や納品待ち顧客への影響

事業停止により、すでに発注を済ませた顧客や納車待ちの事業者には大きな影響が及ぶとみられます。

特に飲食事業の新規参入者にとっては移動販売車の納車が開業スケジュールに直結しており、契約の見直しや返金対応の行方が焦点となっています

また、既存の販売車両に対する修理やメンテナンスが今後どのように継続されるのかも不透明であり、サービスを必要とするオーナーにとっては不安が募る状況です。

事業停止を受けて、代替メンテナンス業者の確保やサポート体制の整備が急務とされています。

法的整理の進行と関係者の情報共有

弁護士による事後処理が進められており、資産の精査や債権者への説明会などが順次行われる予定です。

地元金融機関や行政も一定のサポートを検討しているものの、最終的な整理方針が決定されるまでには時間がかかると予想されます。

また、取引先企業には情報の共有が求められています。

倒産に伴う信用不安は連鎖的な影響をもたらすこともあり、正確な情報と透明性の高い対応が不可欠です。

移動販売車業界の今後と再編の兆し

業界全体の成長余地と再編の動き

移動販売車業界全体を見ると、地方自治体による出店支援や補助金制度により一定の成長が見込まれています。

特に高齢化地域や買い物弱者対策としての巡回販売ニーズは根強く、地場産業と連携した取り組みも進みつつあります。

ただし、こうした需要を取り込むには高い品質と柔軟なカスタマイズ力が必要であり、資金力や技術力に乏しい企業には厳しい局面が続きます。

今後は中堅以上の企業を中心にした寡占化や、設備投資に強い企業への顧客集中が進む可能性が高いとみられています。

地域産業支援のあり方も問われる局面

今回の事業停止は、地域に根ざした企業が苦境に陥るリスクの現実を突きつけています。

行政や商工団体には、単なる補助金支給だけではなく、経営支援や後継者育成、技術承継の仕組みづくりが求められます。

一方、消費者や利用者側にも、地域企業の選択がどのような影響をもたらすのかを理解する視点が必要です。

地元経済を支える担い手を失わないためにも、社会全体での支援と理解が不可欠です。

まとめ

  • シブヤコーポレーションは、事業を停止し弁護士に処理を一任しました。
  • 自社工場の閉鎖による外注費増が、経営悪化の大きな要因です。
  • 地元の関連企業や、取引先への影響も懸念されています。
  • 納品待ち顧客や、車両保有者への対応も今後の課題です。
  • 移動販売車業界全体では、再編の動きが強まっています。
  • 地域産業支援のあり方が、今後あらためて問われています。

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