定年退職後も住宅ローンの返済が残っている場合、年金収入だけで返済を継続するのは極めて困難です。2025年現在、厚生年金の平均受給額は夫婦で月22万円から25万円程度ですが、生活費だけで大半が消えてしまいます。
そこに月10万円前後のローン返済が加われば、確実に家計は赤字となり、貯蓄を切り崩す生活が始まります。本記事では、定年後のローン返済がなぜ困難なのか、そのメカニズムと具体的な対策を詳しく解説します。
そこに月10万円前後のローン返済が加われば、確実に家計は赤字となり、貯蓄を切り崩す生活が始まります。本記事では、定年後のローン返済がなぜ困難なのか、そのメカニズムと具体的な対策を詳しく解説します。
この記事で得られる情報
年金収入だけでは返済が成り立たない理由
2025年の統計データによれば、厚生年金を夫婦で受給する場合の平均月額は約22万円から25万円です。一方、総務省の家計調査では、65歳以上の夫婦世帯の月平均支出は約26万円です。つまり、ローン返済がなくても月1万円から4万円の赤字が発生する計算です。ここに月10万円のローン返済が加われば、月間赤字は11万円から14万円に拡大します。
年金生活での収支試算
– 年金収入:月23万円
– 生活費:月26万円
– 基本赤字:月3万円
– ローン返済:月10万円
– 総赤字:月13万円
– 年間赤字:156万円
年間156万円の赤字を貯蓄から補填すると、500万円の貯蓄は約3年で枯渇します。これが定年後の返済継続が困難な最大の理由です。
– 年金収入:月23万円
– 生活費:月26万円
– 基本赤字:月3万円
– ローン返済:月10万円
– 総赤字:月13万円
– 年間赤字:156万円
生活費の内訳と削減の限界
65歳以上の夫婦世帯の月平均支出26万円の内訳を見てみましょう。食費は約7万円、光熱水費は約2万円、通信費は約1.5万円、医療費は約1.5万円、交際費は約2万円、交通費は約1.5万円、その他雑費が約10万円です。
この中で削減できる項目は限られています。食費を2万円削って月5万円にするのは現実的に厳しいですし、光熱水費や医療費はほぼ固定費です。
仮に極限まで節約して月3万円削減しても、ローン返済10万円がある限り、月10万円の赤字は避けられません。生活費の削減には限界があるのです。
医療費・介護費の増加で赤字がさらに拡大
年齢を重ねるほど、医療費と介護費の負担は増加します。75歳以降は入院や手術のリスクが高まり、年間の医療費自己負担が数十万円に達することも珍しくありません。がんなどの重病では、治療費が年間100万円を超えるケースもあります。
介護が必要になれば、在宅介護でも月数万円、施設入居なら月15万円から30万円の費用がかかります。
医療費・介護費の負担例
– 75歳以降の医療費:年間30万円〜100万円
– 在宅介護費:月3万円〜10万円
– 施設介護費:月15万円〜30万円
– 入院・手術:1回数十万円〜数百万円
基本生活費だけで赤字の状態に、これらの費用が加われば、貯蓄はあっという間に枯渇します。
– 75歳以降の医療費:年間30万円〜100万円
– 在宅介護費:月3万円〜10万円
– 施設介護費:月15万円〜30万円
– 入院・手術:1回数十万円〜数百万円
返済困難を回避する対策①:再雇用で収入を確保
定年後の返済困難を回避する最も確実な方法は、再雇用や継続雇用で収入を確保し続けることです。2025年現在、多くの企業が65歳までの継続雇用制度を導入しています。定年後も5年間働けば、その間の給与を返済に充てられます。
仮に再雇用で月20万円の収入があれば、年間240万円です。生活費は年金で賄い、給与を全額返済に充てれば、5年間で1200万円の返済が可能です。
また、パートやアルバイトで月10万円程度の収入を得るだけでも、家計の赤字を大幅に軽減できます。
返済困難を回避する対策②:返済期間の延長
金融機関と交渉して、返済期間を延長することで月々の返済額を削減できる場合があります。例えば残高1500万円、残り返済期間15年、月10万円の返済を、期間20年に延長すると、月約8.3万円に減少します。月1.7万円、年間約20万円の負担軽減です。
ただし返済期間の延長は総返済額が増えるデメリットがあります。また、高齢者への期間延長を金融機関が認めないケースもあります。
交渉の際は、返済計画の見直しや収入証明の提出が求められます。
返済困難を回避する対策③:リバースモーゲージの活用
リバースモーゲージとは、自宅を担保に金融機関から融資を受け、死亡時に自宅を売却して返済する仕組みです。この制度を活用すれば、自宅に住み続けながら、住宅ローンを一括返済することが可能です。毎月の返済負担がなくなり、年金収入だけで生活できるようになります。
ただし以下のデメリットがあります。
利用できる金融機関が限られる
融資額は自宅評価額の50%から70%程度
金利が通常のローンより高い
相続人に自宅を残せない
これらを理解した上で、選択肢の一つとして検討する価値はあります。
返済困難を回避する対策④:住宅売却と賃貸への転居
どうしても返済が困難な場合、住宅を売却してローンを完済し、賃貸に転居する選択肢もあります。例えば時価2500万円の住宅を売却してローン1500万円を完済すれば、手元に1000万円が残ります。その後、家賃月10万円の賃貸に住み替えれば、ローン返済から解放されます。
賃貸なら住宅修繕費や固定資産税の負担もなくなり、維持費を大幅に削減できます。老後の住まいとして、賃貸の方が柔軟性が高い場合もあります。
ただし売却価格がローン残高を下回る場合、この戦略は使えません。また、高齢者が賃貸物件を借りにくいという問題もあります。
専門家が警告する返済継続の危険性
ファイナンシャルプランナーの多くは、「年金収入だけでのローン返済継続」に強く警告しています。専門家が指摘するのは、返済を優先するあまり、医療費や介護費を削ってしまうリスクです。健康を損なえば、結局医療費が膨らみ、生活はさらに困窮します。
また、貯蓄が底をついた後は、生活保護に頼らざるを得なくなります。しかし住宅を所有していると生活保護の受給条件を満たさない場合があり、結果として住宅を手放すことになります。
こうした最悪の事態を避けるため、専門家は「定年前の完済」または「定年後の収入確保」を強く推奨しています。
返済困難に陥った実例と教訓
ある60代夫婦は、定年時にローン残高1200万円を抱えたまま退職しました。年金収入は月24万円、ローン返済は月9万円でした。当初は「なんとかなる」と考えていましたが、生活費を差し引くと毎月11万円の赤字が発生。貯蓄600万円は5年で枯渇しました。
その後、夫がパートで働き始めましたが、高齢のため体力が続かず、3年で退職。結局、住宅を売却してローンを完済し、公営住宅に転居しました。
この事例が示すのは、「年金だけでの返済継続は現実的に不可能」という厳しい現実です。
よくある質問
Q1: 年金だけでローン返済を続けるのは本当に不可能ですか?
A: 統計的には極めて困難です。年金収入と生活費の差だけで赤字になり、ローン返済が加わればさらに悪化します。
Q2: 定年後も働く以外に方法はありませんか?
A: リバースモーゲージの活用、返済期間の延長交渉、住宅売却などの選択肢があります。ただしそれぞれメリット・デメリットがあります。
Q3: 生活費を削れば返済を続けられますか?
A: 生活費の削減には限界があります。医療費や介護費は削れず、年齢とともに増加するため、根本的な解決にはなりません。
A: 統計的には極めて困難です。年金収入と生活費の差だけで赤字になり、ローン返済が加わればさらに悪化します。
Q2: 定年後も働く以外に方法はありませんか?
A: リバースモーゲージの活用、返済期間の延長交渉、住宅売却などの選択肢があります。ただしそれぞれメリット・デメリットがあります。
Q3: 生活費を削れば返済を続けられますか?
A: 生活費の削減には限界があります。医療費や介護費は削れず、年齢とともに増加するため、根本的な解決にはなりません。
まとめ
本記事の要点
– 年金収入だけでローン返済を続けるのは現実的に不可能
– 年金23万円・生活費26万円・返済10万円で月13万円の赤字
– 医療費・介護費の増加で赤字はさらに拡大
– 対策①:再雇用・継続雇用で65歳まで収入を確保
– 対策②:返済期間延長で月々の負担を軽減
– 対策③:リバースモーゲージで返済負担をゼロに
– 対策④:住宅売却と賃貸転居も選択肢
– 専門家は「定年前完済」または「定年後収入確保」を強く推奨
– 年金収入だけでローン返済を続けるのは現実的に不可能
– 年金23万円・生活費26万円・返済10万円で月13万円の赤字
– 医療費・介護費の増加で赤字はさらに拡大
– 対策①:再雇用・継続雇用で65歳まで収入を確保
– 対策②:返済期間延長で月々の負担を軽減
– 対策③:リバースモーゲージで返済負担をゼロに
– 対策④:住宅売却と賃貸転居も選択肢
– 専門家は「定年前完済」または「定年後収入確保」を強く推奨




