刑事裁判における被告の「手錠・腰縄」の運用が、大きな転換期を迎えようとしています。最高裁判所は2026年1月26日、入退廷時に傍聴人から拘束具が見えないよう、ついたて等を活用する運用見直しの通知を全国に出しました。これまでは「逃走防止」を優先し、拘束された姿が晒されるのが一般的でしたが、これが「推定無罪」の原則に反するという指摘が長年なされてきました。
今回の被告の手錠・腰縄の運用見直しは、司法の現場にどのような変化をもたらすのでしょうか。なぜ今、この改善が必要だったのか。あなたも「裁判を受ける権利」や「被告の人権」について、疑問に思ったことはありませんか?本記事では、このニュースの全容を深掘りします。
1. 概要:被告の手錠・腰縄が見えない運用へ
最高裁は2026年1月26日付で、全国の裁判所に対し、被告人の入退廷時における手錠・腰縄の運用を改めるよう通知しました。具体的には、法廷内に「ついたて」を設置し、その裏側で拘束具を着脱することで、一般の傍聴人からは手錠や腰縄をしている姿が直接見えないように配慮します。
- 傍聴人の目に触れる場所での手錠・腰縄姿を解消する
- 入廷時、ついたての裏で拘束を解いてから自席へ移動
- 退廷時も同様に、ついたて裏で装着してから法廷を去る
- 準備が整った裁判所から順次スタートする
2. 発生の背景・原因:推定無罪の原則と批判
これまで、被告人が手錠・腰縄姿で入廷することは、日本の法廷では「当たり前」の光景でした。しかし、これが国際的な人権基準や、有罪が確定するまでは無罪として扱う「推定無罪」の原則に照らして不適切であるとの批判が根強くありました。
特に弁護士会などからは、「拘束された姿を晒すことは、裁判官や傍聴人に『この人物は犯人である』という強い偏見(予断)を与える」と指摘されてきました。今回の見直しは、こうした長年の人権上の課題を解消するための実務的な一歩となります。
3. 関係者の動向・コメント
最高裁は2025年から、護送を担う法務省や警察庁と協議を重ねてきました。警備の安全性と人権配慮のバランスをどう取るかが焦点となりましたが、最終的には「ついたて設置」という折衷案で合意に至った形です。
日本弁護士連合会(日弁連)は、2024年に「逃走の現実的な恐れがある場合を除き、手錠・腰縄を使用しないこと」を求める会長声明を出しており、今回の通知は弁護側の要望を一部汲み取った内容となっています。
4. 変更の手順と具体的なフロー
最高裁が示した具体的な手順は以下の通りです。
- 裁判官が入廷し、開廷準備を整える。
- 書記官が法廷の出入り口付近に「ついたて」を設置する。
- 被告がついたて裏で待機。その間、職員が出入り口を施錠し安全を確保。
- 裁判官の指示で職員が手錠・腰縄を解き、被告が自席へ移動する。
これにより、傍聴席からは被告が拘束されている瞬間が完全に見えなくなります。
5. 行政・警察・裁判所の対応
法務省や警察庁は、この新運用に伴う安全性の低下を懸念していましたが、出入り口の施錠管理を徹底することで合意しました。各裁判所では今後、法廷の構造や設備に合わせて具体的な運用を検討します。
ただし、全ての被告に適用されるわけではありません。逃亡や自傷、他人に危害を加える恐れが具体的に認められる場合には、従来通り法廷内での装着が認められる例外規定も設けられています。
6. 専門家の見解や分析
法学の専門家は、「裁判員裁判では先行して行われていた運用が、ようやく一般の刑事裁判にも広がった」と評価しています。裁判員裁判では「市民に予断を与えない」ことが目的でしたが、今回は「被告の尊厳」そのものに焦点を当てている点が画期的です。
一方で、「ついたてを立てる手間や、入退廷にかかる時間の増加が実務上の負担になる」という懸念を示す関係者もいます。
7. SNS・世間の反応
ニュースのコメント欄やSNSでは、多様な意見が飛び交っています。
- 「まだ罪が確定していない以上、見せしめのような拘束具は外すべきだ。当然の判断」
- 「被害者の感情を考えれば、被告だけが守られるのは違和感がある」
- 「警備が手薄になって逃走事件が起きないか心配」
人権重視の姿勢を歓迎する声がある一方で、治安維持や被害者感情の観点から慎重な意見も見られます。
8. 今後の見通し・影響
この運用は、2026年中に準備が整った裁判所から順次開始されます。今後は「ついたて」だけでなく、法廷の設計そのものを、拘束具を見せずに済むような構造に変えていく議論も進む可能性があります。日本の刑事司法が「国際標準の人権意識」へ一歩近づく象徴的な出来事となるでしょう。
9. FAQ:よくある質問
Q:手錠を外して逃げたりしないのですか?
A:ついたて裏で外す際も出入り口は施錠され、護送職員が常に付き添います。また、危険性が高いと判断された被告には適用されません。
Q:なぜ今まで改善されなかったのですか?
A:法廷内の安全確保(逃走・自傷防止)が最優先されてきたためです。近年、国際的な人権意識の高まりを受けてようやく議論が進みました。
Q:裁判員裁判とは何が違うのですか?
A:裁判員裁判では「裁判員に予断を与えない(公平な判断のため)」が主目的でしたが、今回は「被告の尊厳・人権(推定無罪の徹底)」が主な目的です。
10. まとめ
今回の被告の手錠・腰縄の運用見直しは、日本の司法制度における「推定無罪」の原則をより実効的なものにするための大きな一歩です。傍聴人からの視線を遮ることで、被告の尊厳を守りつつ、公平な裁判の実現を目指します。安全確保という課題は残りますが、人権と警備の両立を図る新たな法廷の姿に注目が集まっています。
