ジェームズ・ハウエルズ氏が1200億円相当のビットコインを取り戻すために奮闘している。
この事件は、暗号資産の管理リスクを象徴する出来事として世界中の注目を集めている。
彼のビットコインが失われた経緯、発掘計画、そして自治体との対立について詳しく見ていきます。
ジェームズ・ハウエルズとは?失われた1200億円の持ち主

ジェームズ・ハウエルズ(James Howells)は、イギリス・ウェールズ在住のIT技術者であり、暗号資産の初期マイナーの一人である。
彼は2009年に7500ビットコイン(BTC)をマイニングしたが、2013年にプライベートキーが保存されたハードディスク(HDD)が誤って廃棄されてしまった。
当時のパートナー(彼女)が不要な電子機器を整理する際に、意図せずHDDを処分してしまったのだ。
2025年2月現在、1BTCは約1460万円に達し、彼の失われた資産は1200億円相当にまで膨れ上がっている。
彼は10年以上にわたり埋立地の発掘許可を求めてきたが、市当局は環境リスクやコストの問題を理由にこれを拒否し続けている。

ビットコインの仕組みとプライベートキーの重要性
ビットコイン(Bitcoin)は、2009年に誕生した世界初の暗号資産(仮想通貨)であり、中央管理者を介さずに取引が行われる分散型デジタル通貨である。
ビットコインを所有・取引するには、「ウォレット(デジタル財布)」が必要で、これには「公開鍵(public key)」と「プライベートキー(private key)」の2つの鍵が存在する。
公開鍵はビットコインの受け取りに使用されるが、プライベートキーがなければ送金や利用はできない。
つまり、プライベートキーを紛失すると、そのビットコインには二度とアクセスできなくなる。
ハウエルズのHDDには、このプライベートキーが保存されており、それを失ったことで彼の7500BTCも事実上回収不能になっている。
ハウエルズの新計画:ごみ処理場買収で発掘へ

市当局の発掘許可が得られない状況を打破するため、ハウエルズはごみ処理場の買収を検討している。彼の新たな計画は以下の通りである。
- 投資家と協力し、ごみ処理場全体を買収
- 約19億円をかけて発掘作業を実施
- HDDが埋もれていると推測される10万トンのごみを探索
この計画には、高度なスキャン技術やAIを活用し、効率的にHDDを見つける手法が含まれている。
ハウエルズは、「HDDが発見されればデータ回収の成功率は80%」と見積もっており、プライベートキーの復元ができれば、彼の1200億円相当のビットコインを取り戻せる可能性がある。
自治体との対立:なぜ発掘は許可されないのか?
ハウエルズは長年にわたりニューポート市に対し発掘の許可を求めてきたが、市側はこれを一貫して拒否している。その理由として、以下の点が挙げられる。
- 発掘に数十億円のコストがかかる(たとえハウエルズが負担しても、市が管理責任を負う)
- 掘り返したゴミから有害物質が漏れ出す可能性がある(環境リスク)
- 発掘してもHDDが見つかる保証がない(自治体にとってリスクが大きい)
- 裁判所も自治体の判断を支持(合法的な発掘が困難)
さらに、自治体は2025年度中にごみ処理場を閉鎖し、その跡地に太陽光発電所を建設する計画を進めている。これにより、ハウエルズの発掘は時間との戦いとなっている。
HDD紛失の経緯:なぜ1200億円がゴミになったのか?

ハウエルズは2013年、自宅の整理をしていた際に、古い電子機器をまとめて保管していた。
しかし、彼の意図とは裏腹に、当時のパートナーが誤ってHDDを処分してしまった。
当時のビットコインの価格は1BTC=数万円程度であり、7500BTCは数百万円程度の価値だったため、すぐに問題にはならなかった。
しかし、2017年にビットコインが急騰し、1BTCが200万円を超えたことで状況が一変。彼はすぐに埋立地での発掘を試みたが、市当局は許可を出さなかった。
その後もビットコインの価格は上昇し続け、2025年には1BTC=約1460万円に達し、彼の失われた資産は1200億円を超えている。
発掘の成功率とデータ復元の可能性
ハウエルズは、HDDが発見された場合のデータ復旧成功率を80%と試算している。
HDDが多少損傷していたとしても、データ復旧の専門家が物理的な修復を行い、プライベートキーを抽出できる可能性がある。
ビットコインのブロックチェーン上にはすべての取引履歴が記録されており、プライベートキーさえ復元できれば、彼の7500BTCは完全に回収可能である。
しかし、HDDが発見できなかった場合、もしくはデータが完全に損傷していた場合、彼の資産は永遠に失われることになる。
暗号資産の管理リスクと教訓

この事件は、暗号資産の管理リスクを世界に示した事例としても注目されている。
ビットコインなどのデジタル資産は、銀行のような中央管理機関がないため、プライベートキーを紛失すると、誰も資産を復元できない。
そのため、暗号資産を安全に管理するためには、以下のような対策が重要とされる。
- ペーパーウォレット(紙にプライベートキーを印刷し、物理的に保管)
- ハードウェアウォレット(インターネットから隔離された専用デバイスで管理)
- マルチシグ(複数の署名方式)(複数のキーを分散管理することでリスクを軽減)
- クラウドやUSBなど複数の場所にバックアップを取る
世界中が注目するこの一大プロジェクトの行方に、今後も関心が集まり続けるだろう。
まとめ
- 当時のパートナーが不要な電子機器を整理する際にHDDを処分してしまった。
- 2025年2月現在、1BTCは約1460万円に達し、失われた資産は1200億円相当に。
- 市当局は環境リスクやコストの問題で拒否し続けている。
- 発掘のためにごみ処理場の買収を計画し、約19億円をかけて発掘作業を実施予定。