- 餅の主成分「アミロペクチン」は消化酵素で分解されにくい
- 体温で冷えると腸内で固まり「餅イレウス」を引き起こす
- 過去に開腹手術をした人や高齢者は特にリスクが高い
- 予防の基本は「小さく切る」「よく噛む」「一度に大量に食べない」
1. 餅イレウス(腸閉塞)の概要:何が起きているのか
お正月時期に急増する「餅イレウス」とは、食べた餅が小腸で詰まってしまい、内容物が流れなくなる「腸閉塞(イレウス)」の一種です。餅といえば喉に詰まらせる「窒息事故」が有名ですが、無事に飲み込めたとしても、その後に時間差で激しい腹痛や嘔吐を伴うリスクが潜んでいます。
一度発症すると、腸の動きが止まり、ガスや便が溜まって腹部がパンパンに膨れ上がります。重症化すると腸が壊死したり、穿孔(穴が開く)したりする恐れもあるため、決して軽視できない疾患です。
2. 餅イレウスが発生する背景・原因:なぜ「消化に悪い」のか
餅が消化に悪いとされる理由は、その化学構造にあります。もち米のデンプン主成分である「アミロペクチン」は、うるち米のデンプンに比べて構造が複雑で、人間の消化酵素(アミラーゼ)による分解を受けにくい性質を持っています。
さらに、餅つきの過程でデンプンの粒子が強く結びつき、より強固な構造へと変化します。最大の問題は「温度変化」です。加熱時は柔らかく伸びますが、体内(約37度)に移動すると粘り気が増し、冷え固まるような性質を見せます。これが腸の狭い部分にピタッと張り付いてしまうのです。
3. 関係者の動向・専門医によるコメント
呼吸器内科医や消化器外科の医師ら、多くの専門家が警鐘を鳴らしています。ある内科医は「餅は温度が下がると急激に硬くなる。温かく変形しやすい状態で胃を通過しても、小腸へ進む過程で温度が下がり、腸壁に付着してしまうのが餅イレウスの正体だ」と分析しています。
また、過去に胃の切除手術を受けた人や、腸の癒着がある人については、「通常の人よりも道が狭くなっているため、少量の餅でも閉塞の引き金になりやすい」との見解を示しています。
4. 被害状況やリスクが高い人の特徴
餅イレウスで救急搬送されるケースは、主にお正月の三が日に集中します。特に対象となりやすいのは以下の層です。
- 高齢者:咀嚼力が低下し、大きな塊のまま飲み込んでしまう傾向がある。
- 手術既往歴がある人:過去の開腹手術により腸が癒着している場合、物理的に通り道が狭くなっている。
- 胃切除後の方:胃の攪拌(かくはん)機能が弱く、未消化のまま小腸へ送り出されやすい。
5. 行政・警察・医療機関の対応
消費者庁や各自治体の消防局は、例年12月から1月にかけて「餅による事故」への注意喚起を強化しています。窒息事故への対策が主ですが、医療現場では「腹痛での緊急受診」にも備えています。
餅イレウスが疑われる場合、医療機関ではレントゲンやCT検査が行われます。診断が確定すると、鼻からチューブを挿入して腸内の圧力を下げる「減圧治療」が行われますが、これらで改善しない場合には、緊急の外科手術による摘出が必要となります。
6. 専門家によるメカニズムの見解や分析
医学的な分析によれば、餅は「一度に大量に食べる」ことが最も危険です。小腸の長さは約6〜7メートルありますが、その途中で餅の塊が停滞すると、後から来る食べ物も全てストップしてしまいます。専門家は「餅は噛んでも細切れになりにくいため、物理的な『栓』になりやすい」と指摘しています。体温程度の環境では、餅は溶けるのではなく、むしろ粘土のような硬さで腸に居座り続けるのです。
7. SNS・世間の反応:意外と知られていないリスク
SNS上では、「餅は消化に良いと思って風邪の時に食べていた」「お粥と同じ感覚だった」という驚きの声が多く見られます。一方で、過去にイレウスを経験したユーザーからは「あの痛みは二度と経験したくない」「お正月が来るのが怖い」といった切実な体験談も寄せられています。
「消化が良い=エネルギーになりやすい」という意味では正解かもしれませんが、物理的な「消化のしやすさ」においては、餅は非常に難易度の高い食材であるという認識が広まりつつあります。
8. 今後の見通し・生活への影響
今後、高齢化社会が進む中で、餅イレウスの症例はさらに増加することが予想されます。しかし、お正月の伝統文化を完全に否定する必要はありません。大切なのは「リスクを知った上での工夫」です。
「小さく切る」「よく噛む」「水分と一緒に摂る」といった基本的な対策を徹底することで、事故の多くは防げます。特に高齢者のいる家庭では、周囲が餅の大きさを管理するなどの配慮が求められるでしょう。
- Q. 餅を食べてからどれくらいで症状が出ますか?
- A. おおむね24時間以内に、激しい腹痛、吐き気、嘔吐、腹部膨満感などの症状が現れることが多いです。
- Q. 餅は本当に「消化に悪い」のですか?
- A. はい。アミロペクチンという成分が分解されにくく、体温で冷えると固まる性質があるため、医学的には消化しにくい食材に分類されます。
- Q. 予防するために最も効果的なことは何ですか?
- A. 調理の段階で「小さく切る」ことです。口の中で噛み砕くのには限界があるため、最初から物理的に小さくしておくことが最大の防御になります。
